墨彩画とは?水彩画や日本画、水墨画とどうちがうの?

墨彩画は墨と顔彩で和紙に描いたもの

こんにちは。彩りの墨彩画家の高津です。

 

 

私は墨彩画家ですが、個展をすると

墨彩画って何ですか?と聞かれることが

よくあります。

 

 

 

絵を描かない人から見ると、聞き慣れない

言葉なのだと思います。

 

 

 

小学生や中学生の頃に図工や美術の

時間に描いていた絵には墨彩画って

無かったですから、無理もありませんね。

 

一言で言うと

「墨と顔彩という絵の具で

和紙に描いた絵」を墨彩画と呼びます。

 

元々は 中国がルーツで、唐の時代の後半に

山水画として成立し、その後

日本に入ってからは水墨画という名称

普及しました。

 

 

 

切り立った岩山に松の木が生えている

水墨画をご覧になったことがある方も

多いでしょう。

 

こんな感じのですね。

 

 

実際中国の山は絵の通りのものがあり

圧倒的な自然への畏敬の念

表現したものと思われます。

 

水墨画と墨彩画の違いを 歴史的に見てみよう

 

禅宗文化の発展とともに普及

水墨画が日本に入ってきたのは鎌倉時代後期

になります。中国の禅宗文化を学ぼうとし、

墨の濃淡だけで精神世界を

表そうとした禅宗美術は武士の

あいだで人気となります。

 

だるまの絵とか、〇を力強く描いた作品を

見た方も多いと思いますが

こういった絵が代表的なものです。

 

日本オリジナルの水墨画の誕生と普及

長谷川等伯 松林図(右隻)

墨彩画ののルーツは中国ですが、

日本に入ってきてからは 独自の発展を遂げます。

 

 

先ほども言ったように中国の水墨画は

その自然を表現するものですので

 

当然日本の自然を表現したものとは

違いが出てきます。

 

 

 

日本の山は中国の山ほど高くもなく

その植生も違っていますので

 

中国のものと比べると絵は穏やかで

優しげなものとなります。 

 

室町時代の水墨画 茶の湯の発展とともに

禅宗を中心に水墨画が普及しましたが

室町時代になってからは水墨画の発展は

茶の湯との関係が深くなっていきます。

 

 

 

鎌倉時代に禅宗寺院を中心にお茶を飲む

風習が広まりました。

 

 

 

その後室町時代になってからは庶民にも

会所と呼ばれる寄合の建物でお茶が

振る舞われるようになりました。

 

 

 

茶の湯が一部の禅僧たちのものだけではなく

庶民にも普及していったということです。

 

 

 

茶室は床、棚、付書院などを伴った

書院造として形式化していきます。

 

 

 

床の間には中国渡来の茶碗、書画、道具

などが飾られました。

 

 

 

後に侘び茶へと移行していきますが

床の間に書画が飾られるスタイルは

現代にもずっと引き継がれていきました。 

 

日本画の絵師たちが描く水墨画

伊藤若冲 群鶏図

江戸時代になると日本画の絵師たちが

活躍する時代となります。

 

 

 

彼らは岩絵の具を使った日本画を描く傍ら

水墨画も多く残しています。

 

 

 

有名なところでは

雪舟俵屋宗達長谷川等伯尾形光琳

伊藤若冲なども水墨画を残しています。

 

 

 

私が個人的に思うのは

鉛筆というものがなかった当時、

 

墨は日常的に使う道具であり

おそらく日本画の画材を準備するよりも

 

ずっと手軽に使え、そして身近な

道具だったのではないでしょうか。

 

 

 

思いついた課題をメモするような

気持ちでさっと描いたものも

 

現在残っているかどうかはともかく

多かったのではないかと思われます。

 

 

 

ちょうど現代の画家たちが

スケッチブックにスケッチしたり

デッサンしたりする感覚と似ていますね。

 

水墨画が墨彩画に変わるとき

さてずっと水墨画の話をしてまいりましたが

墨彩画はどのようにして誕生したのでしょうか。

 

 

日本画の絵師たちが墨と 岩絵の具を用いて

描いてきました。

ざっくり言えば昔からずっとあったと言えますが

 

 

 

その流れを大きく変えたのは

私個人としては「絵手紙」ではないかと

思っています。

 

 

絵手紙というジャンルが確立された

きっかけは書道家の小池邦夫氏が

 

1978年から1979年にかけて美術雑誌に

6万枚の直筆絵手紙を発表したことによります。

 

 

 

この絵手紙は一大ブームを巻き起こし

そしてそれは今も中高年層を

中心に 衰えることはありません。

 

絵手紙と墨彩画は墨と顔彩を使って

描くということが共通です。

 

 

 

大胆に色彩が使われている

作品を見て衝撃を受けた方は多いことでしょう。

 

 

私もその一人です。

 

 

絵手紙のブームと同じ頃

墨彩画という名前を聞くようになりました。

 

 

当時は墨で描き、顔彩でも描くという

スタイルのものがほとんどでしたが

 

その後様々な画家が

様々な方法や画風を生み出してきました。

 

私は中国や台湾の画家さんの絵が

大好きでよくネットで見ます。

 

 

 

彼らの絵は極彩色で描かれています。

水墨画と墨彩画を厳密に

区別するのはどうやら日本だけのようです。 

 

 

 

今私が描いている方法は墨と顔彩を

混ぜて様々な色合いを出します

 

 

 

墨と顔彩でそれぞれ描いていたのに

比べると遥かに多くの色を生み出すことが

 

 

でき、描けるモチーフも多くなり

画風も 様々なものができます。

 

水彩画と墨彩画をくらべてみよう

次は他の絵を描く技法と比べることで

より墨彩画とはどういうものかを

知っていきましょう。

 

墨彩画と水彩画の同じところ

 

墨彩画と水彩画の同じところは

絵の具が水に溶ける性質を持つ絵の具で

あるという点です。

 

 

 

墨彩画の絵の具は顔彩と呼ばれる絵の具です。

水彩画の絵の具は透明水彩絵の具

 

ガッシュと呼ばれる不透明水彩絵の具ですが

どちらも水で薄めて使います。

 

 

墨彩画と水彩画の違うところ

一番の大きな違いは支持体である紙の種類です。

水彩画は水彩画用紙と呼ばれる洋紙です。

 

洋紙は水が染み込まないという特徴を持ちます

 

墨彩画の紙は洋紙ではなく和紙です。

ほとんどの墨彩画(水墨画も同様)は

にじむ和紙に描きます

 

 

ドーサ引きという作業をして

にじみを抑えることもできます。

 

 

まとめ

墨彩画と水彩画の違いは紙です。

墨彩画は滲む紙に描く

水彩画はにじまない紙に描きます。

 

 

 

どちらもにじみとかぼかしの

技法ができますが

 

墨彩画は絵の具が紙に染み込む時に滲み

水彩画ははじいた水の中を絵の具が動いて

 

にじみとかぼかしができるという

違いがあります。

 

日本画と墨彩画をくらべてみよう

尾形光琳 燕子花図屏風

日本画と墨彩画の同じところ

日本画と墨彩画の同じところは和紙に

描くというところです。

 

日本画と墨彩画の違うところ

 

和紙の種類の違い

 

日本画と墨彩画は和紙に描くという

点では同じですが和紙の種類が異なります。

 

 

 

基本的には日本画は麻の繊維が入った

麻紙と呼ばれる和紙に描きます。

 

 

 

基本的にというのは現代では

日本画家さんも様々な和紙を

使って描かれる方が いらっしゃるからです。

 

 

 

墨彩画では画仙紙と呼ばれる和紙を使います。

画仙紙は書道の時にも使われる紙です。 

 

絵の具の違い

顔彩
岩絵の具

日本画と墨彩画の違いは絵の具です。

 

 

 

日本画は岩絵具と言う岩石や鉱石を

砕いて粉状にしたものを膠と言う

 

接着剤の役割をするものを混ぜて

使います。 また水干絵具と呼ばれる

 

絵の具も使います。

 

 

 

顔彩も使いますが、これはメインの

絵の具ではなく岩絵具を使う前の

練習用として使用されます。

 

 

一方墨彩画は岩絵具や水干絵具を

使うことはありません。

 

和紙の加工の違い

 

再び支持体である紙の話に戻ります。

 

 

 

日本画を描くための和紙には

ドーサ引きをしてにじみを止めます

 

 

 

これは岩絵の具で描いた時に

絵の具を紙に載せるためでもあります。

 

 

 

ドーサ引きをしていない紙に岩絵の具で

描くことはできません。

 

墨彩画では基本的にはドーサ引きをしていない

紙を使用しますが、にじみ具合は

 

紙によってかなり差がありますので

自分でドーサ引きをすることもあります。

 

 

 

和紙を作る時にドーサを混ぜて

漉いてあるものもありますので

用途によって選ぶといいかと思います。

 

 

絵手紙と墨彩画をくらべてみよう

絵手紙と墨彩画の同じところ

 

絵手紙と墨彩画の同じところは道具です。

墨と顔彩で和紙に描きます 。

 

絵手紙と墨彩画の違うところ

 

絵手紙と墨彩画の違うところは

手紙がメインか、絵がメインか、と言う

ところだと思います。

 

 

 

墨彩画でも絵と文字の両方を書いた

書画と呼ばれるものがあります。

 

 

 

絵手紙か墨彩画かという事は

作家さんの意識によるところが大きい

捉えると良いかと思います。

 

 

つまり描いた人が

絵手紙を描いたといえばその作品は絵手紙だし

 

墨彩画を描いたといえばその作品は墨彩画という

ことになります。 

 

墨彩画をおすすめする理由 美しい日本の固有色で手軽に描ける日本人の感性に響く絵

さて、ここまできて

ざっくりとですが墨彩画が

 

どんなものか少しわかっていたただけた

でしょうか?

 

私は自分でも墨彩画を描いていますので

どのジャンルにしようか迷っている

皆さんに墨彩画をおすすめします。

 

 

 

その理由は

 

 

  • 手軽で道具の扱いが簡単である

筆に水をつけて顔彩をなぞれば

すぐに描くことができます。

 

日本画のように膠をまぜて

塗れる状態にする作業は必要ありません。

 

また、水にとけるものなので

手や描いているテーブルに絵の具が

 

ついた時もすぐに水でふけば落ちます。

専用のクリーナーなどは必要ありません。

 

 

  • 日本の美しい色合いで描くことができます

顔彩は日本の固有色といって

私たちが見慣れた美しい山や空、海、

 

花や木々の色合いを元にできています。

 

日本の自然を美しいと思う方や

油絵の具の色合いが強すぎて

 

苦手と感じる方などには特におすすめです。

 

 

  • 自由な画風で描くことができます。

私がよく出会うのは絵手紙を習っていて

自分だけの画風をつくりたいと

 

おっしゃる方や

手紙ではなくて絵を思う存分描きたいと

 

おっしゃる方がいます。

 

そんな方にも墨彩画はピッタリな

ジャンルだと思います。

 

 

ここまで読んでくださり

ありがとうございます。

 

 

次回は墨彩画を描くための

道具についてお話していきたいと思います。